地酒専門店で、キュッと角打ちを楽しもう

イズミヤ

いずみや

「福生の地酒へのこだわり」に自信があります

住所
福生市加美平2-1-9
TEL
042-551-5774

「福生の地酒」と大書された、緑の酒瓶が目印。
間口は半間に毛の生えた程度で、
カウンターの幅は、わずか10センチ。
これがなかなか、居心地がいい。
地酒愛にあふれる店内で、今宵も角打ちと洒落こもう。

(店名)

否応にも目に飛び込んでくる外観

  • 端正な檜のカウンター

    最高の大吟醸と言われる、嘉泉の「對鷗」はワイングラスで供される。香りのいいお酒は、ワイングラスだとより香りが立つという

  • 端正な檜のカウンター

    入って右側の壁一面が、酒瓶の陳列台になっている。渡邉さんがテイスティングし、その酒の特徴など記したカードは見逃せない情報満載だ

  • 端正な檜のカウンター

    女性2人で、粋に角打ち。横田基地の女性スタッフのお二人、田村酒造の「純米大吟醸」と、石川酒造の「東京の森」がことのほか、お気に入り

店長からの一言

店主 渡邉徹夫さん・広美さん

渡邉徹夫さん・広美さん

嘉泉はほぼ全て、取り揃えています。多満自慢に澤乃井など、西多摩の地酒を中心にした地酒専門店です。店内の一角に角打ちコーナーを設け、無料や有料で試飲していただけます。楽しんで試飲していただいて、悔いのないお酒を選んでいただければと思います。どうか、お気軽にお店を覗いてみてください。

基本情報

店名 いずみや
住所 福生市加美平2-1-9
電話 042-551-5774
営業時間

11:00~19:00

定休日 日曜、月曜
駐車場 2台
カード使用
URL http://picbear.club/izumiya_fussa_sake

ストーリー

福生の地酒にこだわった、地酒専門店を

店の奥から入り口を望む。右手にカウンター、左手に酒瓶の陳列棚。スタイリッシュな雰囲気だ

店の奥から入り口を望む。右手にカウンター、左手に酒瓶の陳列棚。スタイリッシュな雰囲気だ

 目に飛び込んでくるのは、グリーンの大きな酒瓶の看板だ。「福生の地酒」と堂々明記され、ガラスの扉にも「酒」という大きな文字が大書され、外観からして日本酒通をこれでもかと挑発する。
 しかし、その店は意外にかわいらしい。間口を測ってみたら、たったの120センチ。間口は狭いがまあまあ奥行きがある、鰻の寝床のような店内だ。足元はコンクリートそのもの。何を隠そう、ここはかつてコンビニ時代の「通路」に作られた店なのだ。渡邉さんは言う。
「いろいろ店を探したが、なかなかない。日本酒だけを売るならここでもできるなと思いつき、福生の地酒だけを売るにはここで十分だと、こういう店になりました」
 これがなかなかおしゃれで、黒を基調とした店内はスタイリッシュな雰囲気を醸し、高級感のあるギャラリーのよう。随所にこだわりがあり、天井から吊るした鎖は日本酒の「酵母菌」をイメージしているというからびっくり。
 私がふとギャラリーを連想したのは、天井までの壁一面に設置された、酒瓶が並ぶ棚のせいだ。一瓶ごとに棚が区切られるという、他でみたことがない酒瓶のディスプレイが斬新極まりない。ボックスに鎮座するそれぞれの酒瓶が威風堂々、その魅力を主張する。個性豊かなスターが右側の壁一面に一堂に会し、個性を競い合っている。それは、まさに壮観だ。
「嘉泉はほぼ全部、多満自慢に澤乃井を中心に、西多摩の地酒を約100種、用意しています。これから千代鶴や東村山の金婚正宗など、東京の地酒を並べたいですね」
 壁を見上げるだけで、何か作品に対峙するような感覚がこみあげる。あれも飲みたい、これもいいな……、日本酒好きの心にもはや、ブレーキはかけられない。

いろいろなお酒をちょっとずつ、試飲できる楽しみも

角打ちのカウンター前。ショーケースには各蔵元の名入りの猪口が並ぶ。まさに「地酒で乾杯」だ

角打ちのカウンター前。ショーケースには各蔵元の名入りの猪口が並ぶ。まさに「地酒で乾杯」だ

 開店にあたり、渡邉さんがこだわったのは「角打ちコーナー」を作ることだった。角打ちとは文字通り、酒屋の一角で立ち飲みをすること。これは、何としても欲しい。そこで作ったのがカウンターだが、この間口では10㎝以上の幅は無理だ。それでも、何としても欲しかった。
 ここで150円から300円の値段で、さまざまな酒を、試飲することができるのだ。お客の要望で柿ピー、チーカマなどつまみも用意している。
 訪ねたこの日は、嘉泉の「無濾過 ふねしぼり」が250円、同「にごり酒」が200円、同「田むら」「純米吟醸」が300円、多満自慢の「純米無濾過」が150円、「純米大吟醸」が300円という価格で出されていた。青梅の澤乃井「大辛口」は200円の提供だ。
「東京国税局の鑑評会で首席を受賞した、嘉泉の究極の大吟醸『對鷗』の試飲にも、運が良ければ出会えます。これも、300円です。大吟醸など香りを楽しむお酒は、ワイングラスで提供させていただきます。香りの立ち方が全然、違いますから」
 え? まさかあの、究極の大吟醸「對鷗」が味わえるなんて! こんな機会がいただけるとはなんという朗報だろう。日本酒好きはもちろん、これから日本酒の世界を旅したいと思う向きにも、格好のお立ち寄りスポットが誕生した。

2人の祖父が杜氏という、血脈に導かれ……

母方祖父が嘉泉の杜氏、父は嘉泉の番頭さん

徹夫さんの母方祖父、大島勘四郎杜氏。戦後すぐから高度経済成長期まで、田村酒造で杜氏を務めた。先代・半十郎氏によれば「寡黙な人格者で、その腕に間違いはなかった」と言う

徹夫さんの母方祖父、大島勘四郎杜氏。戦後すぐから高度経済成長期まで、田村酒造で杜氏を務めた。先代・半十郎氏によれば「寡黙な人格者で、その腕に間違いはなかった」と言う

 いずみやは昭和43年、お菓子屋としてスタートした。その時代、のちに作家となる若き日の村上龍も客として通っていた。業態をコンビニに改めた時代には、Fの店のメンバーでもあった。コンビニを28年続けてきたが、子どもが巣立ったのを機に、朝7時から深夜12時までの長時間労働から身を引いた。 
 あれから5年、飲食店を中心に業務用の配達を続けてきたが、渡邉さんの中にむくむくと、日本酒を売る仕事をしないといけないという思いが芽生えてきた。
「母方祖父が嘉泉で戦後すぐから高度成長期まで、杜氏をしていました。父方祖父も新潟の『越の荒波』という蔵の杜氏だったんです。父は生涯、嘉泉の番頭として勤めていました。祖父から父へと続いたものを何か引き継いで、最後は酒を売って終わらないといけないなって思ったんです。
 酒屋がどんどん廃業する時代に新たな酒屋を始めることに、妻の広美さんはどう思ったのだろう。
「いいと思いました。最近、嘉泉がずいぶん前に出していた季刊誌『ひねりもち』で杜氏が特集されていたものを手にし、義父のことを知り、身体が震えました。涙が出ました。だから日本酒を売ると言われた時、私は一も二もなく賛成しました。そうすべきだと思いました」
 実は「ひねりもち」のライターは私なのだが、このような形で誰かの背中を押すことになるとも思いもしないことだった。しかも2001年の夏号という、大昔の話だ。タイトルは、「嘉泉 杜氏列伝」。代々の杜氏のカッコよさに痺れながら書いたことを覚えている。渡邉さんの祖父である大島勘四郎杜氏には、先代・半十郎さんの話から「寡黙な人格者」とキャッチコピーをつけた。渡邉さんは言う。
「なんかね、何かか、誰かかわからないけど、やらされてる感がすごくあるの。28年もコンビニで酒を売ってきたけど、利き酒師の免許を取ろうなんて一度も思ったことがない。それなのに今、勉強しているんですから」
 大島杜氏の酒造りは「間違いがなかった」という。祖父の酒造りにかける思いを受け継がないで人生を終えることはできないーー2人の杜氏の思いを受け継ぐ、街の酒屋さんが誕生してくれたことに心からエールを送りたい。

日本酒を愛する者たちの、ささやかな止まり木として

個性豊かな酒瓶が、それぞれのボックスに鎮座する。なんとも威風堂々、日本酒好きでなくともきっと、わくわくする?

個性豊かな酒瓶が、それぞれのボックスに鎮座する。なんとも威風堂々、日本酒好きでなくともきっと、わくわくする?

 オープンして2ヶ月ちょっと。いろいろなお客と出会ってきた。意外だったのは30〜40代の女性が一人で来るケースが多いこと。ある女性は「『田むら』を飲んでみたかったの」と来訪の理由を教えてくれた。私が狙っている「對鴎」もそうだが、どんな味わいなのか、ちょっと試してみたい向きには実に使い勝手がいい。何しろ、福生でどこにもない「角打ち」ができちゃう店なのだから。
 もちろん、日本酒通の皆さんも飛び込んでくる。結果、様々な蘊蓄をうかがうことに。羽村から福生まで歩くことを習慣にしている男性がここを見つけ、以来すっかり常連に。必ず、2杯だけひっかけて駅へと向かう。「ちょっと引っ掛けてから帰りたい。居酒屋だとお金も時間も使うことになるから」と。
 この狭さが妙に居心地がいい。壁一面に鎮座する酒瓶を眺めながらの一杯は、なかなかに至福の味わいだ。
 まだ途上だが、一つ一つの酒情報を瓶の下に掲示していく予定だという。「米の産地」「日本酒度」「製法」「酸度」「アルコール度数」「精米歩合」など基本情報以外に、たとえば「田むら 吟風」なら「香り良く、後味がさっぱりしています。数種類の酵母を使用」、嘉泉「純米大吟醸」には「究極の火入れ方法である瓶燗を採用。味と香りのバランスが絶妙。しっかりしたボディ」と渡邉さんがテイスティングした情報までちゃんと盛り込まれている。お酒を選ぶのに、どれだけありがたいことだろう。
「楽しんで試飲していただいて、そしてお酒を選んでもらえれば」と渡邉さん。
 日本酒愛にあふれた、心地よい止まり木のような空間が出現してくれたことに感謝したい。これでまた、福生の街歩きが楽しくなる。

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