銀座通りの一角に、高々と掲げられた、「七夕 酒まんじゅう」の看板。創業以来48年、頑固に守られる変わらぬ味は、福生のお茶の間にとって、ロングセラーの逸品ばかり。大量生産の対極にある、本物の「おやつ」に会いに行こう。
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いなりの油揚げは、こうして一日、たれにつけて味をしみこませる。
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これが、大好評の三色弁当。赤飯はふっくら、かんぴょう巻もお酢がきいて美味。
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どれもこれも欲しくなるショーケース。店員さんの気持ちのいい応対も〇。
店長からの一言
幡垣 裕貴さん
味に関しては、頑固ですね。とくにこだわっているのが、最高の材料を使うこと。たとえ値段が上がっても、材料は落とせないというのがウチの信条です。ぜひ、一度、食べていただいて、「本物の味」に喜んでいただければと思います。季節ごとにいろいろなお菓子がありますから、ぜひ、和菓子で四季を感じてほしいですね。
基本情報
店名 | 伊勢屋 |
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住所 | 福生市本町128 |
電話 | 042-553-0396 |
営業時間 |
10:00~17:30 (平日)10:00~17:00 (土日祝) |
定休日 |
日曜 日曜日営業の場合、翌営業日がお休みとなります |
駐車場 | 店舗駐車場1台 |
カード使用 | クレジットカード、Suica可 電子決済可(pay pay、d払い、aupay、Rpay)、QR決済可 |
URL |
ストーリー
手作り、無添加、昔ながらの和菓子
伊勢屋の朝は早い。赤飯を蒸かし、お米を炊き、団子やまんじゅうの生地をこね・・、これが昭和30年の創業以来、変わることのない伊勢屋の朝の光景だ。早朝6時には、いい匂いの湯気が銀座通りに立ち込め、こうして商品ひとつひとつが店の奥にある工場で手作りされる。ここに長年に渡り「間違いのない味」と、お客から支持されている理由がある。
「ウチの団子はふっくら、やわらかめが特徴です」と2代目・幡垣正生さん。40種以上あるという商品、「素材はすべて、最高のものを使う」のが信条という。自慢の団子をいただく。吟味された小豆を使った自家製餡は、さらりとしたやさしい味わい。みたらしのタレもまた絶品。このタレ、「材料はシンプルにしょうゆ、水、砂糖だけ。もちろん無添加」で、創業時から変わらない「伊勢屋の味」のひとつという。
添加物満載の現代食品事情にあって、昭和30年代と全く変わらない「おやつ」を食せるなんて、本当に幸せだと思う。
庶民に愛されるロングセラーたち
伊勢屋の基本は、自家製・手作り。七夕名物「酒まんじゅう」は、酒種を作るところから作業が始まる。ドラ焼きは小麦粉、卵、ミルク、蜂蜜、砂糖、重曹と吟味された素材の生地を、手で焼く。「チョコ」「バター」というオリジナルは、洋菓子店での修行経験がある2代目の、「子どもに和菓子を好きになってほしい」という思いから生まれた一品だ。
「三色弁当」はいなり、のり巻き、赤飯と、伊勢屋自慢の味が一度に3種類味わえるとあって、根強いファンが多いロングセラー。幼稚園から小学校、老人クラブまで、行事弁当としても人気絶大だ。1日平均300個は出るといういなりは、しょうゆ、水、砂糖という昔から変わらぬシンプルな味つけ。一晩たれにつけておくのが、味をしみこますポイントという。しっかりと味がしみこんだ油揚げの、何と美味なること!
伊勢屋のショーケースには、昔から人々を癒し続けてきた、郷愁を誘う「食」の風景がぎっしりつまっていた。
あくまでも、地域に根ざした「食」として
昭和30年、伊勢屋創業
訪ねたのがちょうど年の瀬だったこともあり、さまざまな大きさのお供え餅や切り餅が、店頭を飾っていた。毎年、この時期、伊勢屋ではどこもかしこも「餅だらけになる」という。「もちろん、最上級のもち米を使っています。今年は米が不作でしたが、みなさん、毎年、おいしいお餅を食べたいと楽しみにされていますから、米の質だけは落とせませんね」と幡垣さん。味が変われば、「何だ?」とすぐわかるお客さんばかり。これほど多くの、かつ長い間にわたるファンが多いのも伊勢屋の大きな特徴だ。
伊勢屋創業は、昭和30年のこと。幡垣さんのお父さん、実さんが若干、22~23歳の頃、和菓子職人を雇って銀座通りに店を構え、大福、おはぎ、団子などの餅菓子に、酒まんじゅう、茶まんじゅうなど当時のお茶の間に欠かせない和菓子を、自家製・手作りで販売した。誰もが食べ親しんでいる定番の和菓子が買えること、そして何よりその味が支持され、人気を博し、以来、地元・福生のみならず、あきる野市まで根強いファンを拡げてきた。
地域に密着した、食として・・
上生菓子「寒牡丹」を作りながら、「こういう上品なお菓子を作るのは、お正月だけ。普段はやりません」と幡垣さん。和菓子職人としてもちろん技術はあるが、あえて店の定番にはしないという。「肩が凝るようなものじゃなく、普段着のお菓子がイチバン。職人の技がどうの・・なんて気張ったことはやりたくない」とハハハと笑う。幡垣さんは製菓学校で和菓子作りを学び、卒業後は2年間、洋菓子店で修行をした。「和菓子の技術だけで家に戻るつもりはなかった。発想が狭くなるし、勉強し続けたい」との思いゆえのことだった。
家業を継いで18年、「もちろん、柱は伝統の商品ですが、職人として固まらないように・・」と2代目主人は新商品への意欲も満々だ。今や3児の父、夕方には小学生にバスケットを教え、福生二中の若きPTA会長としても活躍中。「今後とも、地域に密着した店として、"間違いのない味"を提供していきたい」と幡垣さん。アツいハートで地域貢献に邁進する、明るくおおらか、気さくな和菓子職人の姿は、飾らない伊勢屋の味そのものに見えた。