決して、高みのジャーナリズムには与(くみ)しない。
信条はあくまで地域密着、足元にある。
個性豊かな西多摩各市町村をつなげ、
セミナーや教室で、人生をバックアップ。
誇り高きローカル紙が、わが町には健在だ。
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3階のフリースペースでは、読者を対象にさまざまな講習が行われている。「親と子のかかわり方教室〜子育てのやさしい心理学」はさまざまな気づきを与えてくれる。とりわけ、子育て中の世代に好評だ
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(株)セレモアと共催、「終活セミナー」の様子。第2回のテーマは、「『もしもノート』を知っていますか」。知ると知らないのでは大違いだと参加者たち。読者との絆作りにも役立っている
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福生駅から徒歩5分。青梅線に面して立つ社屋ビル
店長からの一言
柴崎 斉さん
住んでいる人の目線に立ち、地域をつなげて行く役割を担っていると自負しております。そのためには何より、良質な情報を作ることに尽きます。お客さまの声を生かした事業展開を進めることで、さらに身近な存在になれるように心がけています。自費出版や教室事業も行っていますので、いかようにもご利用いただければと思います。ぜひ、幣紙を手に取ってみてください。
基本情報
店名 | ㈱西多摩新聞社 |
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住所 | 福生市本町33 |
電話 | 042‐552-3737 |
営業時間 |
9:00~17:30 |
定休日 |
日曜、祝日 第2・4土曜 |
駐車場 | あり |
カード使用 | 不可 |
URL | http://www.nishitama-shinbun.co.jp |
ストーリー
紙面に溢れる、西多摩愛
たとえば、2014年12月19日号の一面。トップは福生のスーパーいなげやによる「新規就農者 販売コーナー常設」という全国初の試み、横に衆院選の結果、下段は「親子クッキングコンテスト全国大会へ」という福生の母子の記事に、「梅の里を菜の花で彩る」と青梅市が来春、梅まつりに代えて「吉野梅郷花まつり」を開催するというニュース。
4面・5面では「温泉でほっこり」と西多摩各地の温泉施設を紹介し、6面では「2014年重大ニュース」と題して西多摩の一年を振り返る。
西多摩新聞の紙面にはその名の通り、青梅市、福生市、羽村市、あきる野市、瑞穂町、奥多摩町、日の出町、檜原村の政治、経済、イベントや暮らしのさまざまな情報が満載だ。
柴崎社長は、こう語る。
「一地域に担当者を置いて、地域に張り付く取材がわが社の鉄則です。地域に根ざしているからこそ、わかることがあるんです。常に住んでいる人の目線に立って、どのように地域をつなげて行くかという視点を、うちの記者は持っていますね」
いくらネット社会になったとはいえ、身近なところで何が起きているかは案外、わからない。それほど地域のネットワークは、ますます貧弱になりつつある。それを補って余りあるのが、西多摩新聞で提供される情報の数々だ。どのエリアも個性的で、日々刻々と変化しているありようが、紙面から一目でわかる。これらを知らずに過ごしていたとは、なんともったいないことをしていたんだろう。柴崎社長がにやりと笑う。
「逆に、こうも言われます。地方ローカル紙がない地域は、足元を知ることがない、と」
まさに! 中央からの情報しか入ってこないならば、それはむしろ情報の貧困だ。住んでいる町を知らずして、どうして生活が豊かになるだろう。しかも、西多摩という地域の良さをさまざまな角度から再認識させられ、この地域で生きていることへの喜びも生まれる。紙面に溢れるのは、西多摩愛そのものだ。
発行は毎週、金曜日。宅配で届けてくれる。
自費出版に教室、ソフトボール大会も
25年前から新聞だけでなく、自費出版部門を立ち上げた。自分史や西多摩特有のさまざまなジャンルの物語や、絵本や写真集などさまざまなタイプの本が出版されている。柴崎社長は言う。
「結構、評判がいいんですよ。西多摩の中でぐいぐい動いて、全国区になった本もあります」
西多摩新聞の連載からスタートし、全国規模で読まれるようになった本のひとつに、西田小夜子さんの『定年漂流』(2003年)という名著がある。あるいは日の出町で診療を行うDr.重さんこと、神尾重則さんは三浦雄一郎氏のスタッフドクター。こんな異色の顔をもつ著者もいる。
「本によりひとつひとつ違いますが、原稿持ち込みでリライトし、編集、制作、完成までで30万円から150万円ぐらい。大手出版社でも自費出版をやっていますが、その半分ぐらいだと思います。気軽に相談いただければ、ありがたいですね」
低予算で自分史という記録を残せる、実にいい機会ではないか。どんな人にも物語がある。それを地域に還元する役割も出版事業は担っている。
あるいは、現在開催中の「終活セミナー」や「親と子のかかわり方教室」などの無料セミナーや、有料の写真・書道教室事業を展開するのも読者との双方向的な関係を意識するからだ。
「3階のフリースペースで行う、お客さまの声でスタートした事業です。西多摩新聞をより身近に感じていただき、それぞれの方の人生を切り開く一助となればうれしいです」
西武信用金庫と共催で行う「ソフトボール大会」は、2017年で30回目を迎えるという息の長い事業だ。柴崎社長は言う。
「新聞を発行するだけでなく、地域や人をつなげる役割も、地方ローカル紙にはあると思っています。なのでいろいろ、やってますよ。蕎麦打ち大会でプロになった人もいますし、いろいろなきっかけとなる<種>を提供できれば。地域のお役に立てるようなさまざまな試みを、これからも打ち出して行きたいと思っています」
こんな頼もしいパートナーが地域に存在し、暮らしを支えてくれるとは、西多摩暮らしはなかなか、贅沢なことなのかもしれない。
西多摩という、地域をつなぐ接着剤として
塩を舐めてでも、新聞を発行しよう
柴崎社長は創刊以来、4人目の社長だ。
創刊は、1950(昭和25)年6月1日。羽村に住む、満州帰りの吉良金之助さんが主筆、発行という個人新聞という形で産声を上げた。西多摩だけでも7つの新聞社があったという時代、西多摩という広い括りで情報を得たいというニーズに応えた形での創刊だった。
1983年、都議会議員を長く勤めた田村利一氏へと経営が移管されたことをきっかけに法人化、株式会社となった。34歳で西多摩新聞社に入社した柴崎さんが、3代目社長の父・新さんから社長職を引き継いだのは、2006年のこと。
「創刊時から変わらないのは、記事を残すことは史実として残る、だから残すのだという使命感ですね。受け継いでいるのは、<塩を舐めてでも、記事を書け>と<誠実・努力>というモットーです。どんなに経営が厳しくても、地を這ってでもとにかく記事を書いて、新聞を発行し続けるということ、そして地域のお役に立つために前向きに努力するという精神です」
創刊時の題字は手書きだが、活字となった今でも「桜」と「川」のモチーフは変わらない。
「これは多摩川と、多摩川沿いの桜ですよ。まさに、西多摩のシンボルですから」
社は編集部、営業部(広告)、販売部に分かれ、15年前より宅配という手配りで届けている。「取材して作って、お客様の手元へ配るまでが仕事」と柴崎社長。
「地域のために、さまざまな人の声を吸い上げて伝えて行く。新聞ですからクールに、事実を淡々と。営業の社員も広告の話をしながら、さまざまな中小企業の情報を取っているわけで、すなわち一記者なんです」
地域に張り付いた記者が日々、足で歩いてつかんだネタを、客観性を担保した記事にする。2018年6月で創刊68年を迎えるという西多摩新聞の揺るぎなき信頼は、地道なひとつひとつの仕事にあった。
西多摩暮らしに誇りが持てる、紙面作りを
西多摩暮らしに誇りが持てる、紙面作りを
今こそ、西多摩の良さを自覚的にとらえるべきだと柴崎社長は考える。
「都内との格差を埋めるという視点で考えれば、西多摩はただの東京のはずれです。しかしこれからは、西多摩で暮らすことの豊かさに重点を置いて考えるべきではないでしょうか。むしろそれぞれ個性の強いエリアを持つ強みを、逆に都内へと発信していきたい」
柴崎社長は西多摩という地域こそ、成熟した暮らしが味わえる場所であると言う。自然と生活が豊かに絡み合い、農林業、工業、商業と産業も多彩だ。だからこそ、都内ばかりに目を向くのではなく、今こそ、足元を見つめてほしい。そのために、西多摩新聞はあるのだと。
「西多摩をつなぎ、結ぶ役割を担うことで、ここで暮らす人たちが、地域とのつながりを感じ取れる成熟した社会が可能になると思うんです。単に新聞を発行して、事足りるとは考えていません。新聞には人や地域をくっつける役割がある。地域をつなげる接着剤としての役割を、今後とも果たしていくつもりです」
目指すのは「高校生も読む新聞」。今後はネットと電子化を進め、より役に立つ形で情報を裾野広く届けたいという。
さあ、地方ローカル紙がある地域に住んでいる幸せを、西多摩新聞でたっぷりと味わおうではないか。