「家」に、「人」が合わせる暮らしではなく、住む「人」それぞれに、合う「家」を建てる。家とは、家族が物語を紡ぐ大事な場所だから。創業140年は、信頼の証。家造りの頼もしいパートナーが、熊川に健在だ。
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今や「エコ」と、イチオシの太陽光発電。
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木材を加工できる設備も完備。木を見る力を生かした、木材加工は職人仕事の基本
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石川酒造横、稲荷神社の鳥居は50年くらいに、祖父が作った。7年前に5代目である天野さんが、再築したという、親子3代の作品
店長からの一言
天野久徳さん
家造りは、お客さまの気持ちが第一です。お話をじっくりと聞かせていただくところから、私どもの家造りは始まります。自分の好み、暮らし方を追求できるような家をお望みの方は、ぜひ、いらしてください。趣味や住み方へのこだわり等、何なりとおっしゃってくだされば、ご希望にとことんお応えいたします。ハウスメーカーでは実現できない家造りが、可能です。どうか、お気軽にご相談ください。
基本情報
店名 | 天野建築㈱ |
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住所 | 福生市熊川182 |
電話 | 042-553-0643 |
営業時間 |
8:00~18:00 |
定休日 | 日曜、祝日 |
駐車場 | あり |
カード使用 | 不可 |
URL | http://www.amano-kenchiku.co.jp |
ストーリー
無垢の家を建てましょう
中央には、ケヤキの一枚板のテーブル。べんがら色に塗られた壁の横には、大正時代作・千本格子の引き戸。壁の腰板には無垢の木、床は自然素材のウッドデッキ。目の前に、140年の伝統と"現代"の融合が広がる。こんな斬新な空間が、打ち合わせルームだった。「和洋折衷ですよ」と笑って迎えてくれた天野社長は、一級建築士の資格をもつ5代目だ。
天野建築の基盤にあるのは、今も職人仕事だ。「主要な木材は代々、直に取引をしている製材屋の山へ行って、お客さんと一緒に選ぶころもある」と、始まりから違う。奥多摩や檜原村など多くの地元産の木材を使うのは、「その土地の木が、家には一番いい」からだ。材木を見れば一目瞭然、木を見る力もちゃんと受け継いでいる。
一方、工場での木材加工=「プレカット」(注1)も否定はしない。ただしお任せではなく、「こだわりの持ったプレカット屋」を選び、足を運んで、自分の目で材料を選ぶ。
昔ながらの職人仕事と、"平成・大工事情"の全てを知る天野さんが辿りついたのが、「無垢の家」という。「躯体は、プレカットでも十分。でも直接肌に触れ見える部分は、化学物質で張り合わせた合板ではなく、無垢の木を。壁もクロスではなく、珪藻土の塗り壁など、自然のものを使ってほしい」と呼びかける。それが、小さい子どもも安心して暮らせる家だから。大事なものを見つめる、ぶれない"目"こそ、創業以来、変わらぬものだった。
(注1)プレカット:現場施工前に工場で加工を施しておくこと
これからはエコ、ぜひ太陽光発電を
天野建築オリジナル「ヒヤリングシート」と題する、チェックシートが面白い。
お客に、どのような家を望むのか、暮らし方を含め、細部にわたる質問がおよそ100項目。「居間って、何?」という質問の4択は「TVを見る所/ごろごろする所/お客様を接待する所/家族の憩いの場」。「朝食は?」「夕食は?」の質問には、「ばらばら/必ず一緒に/テレビを見ながら/めったに食べない」と聞いてくる。
「チェックシートはそのご家族がどのような住まい方を望むのか、具体的に考えてもらうためのものです。家造りは、お客の気持ちが第一。こうやって施主さんと一緒に、30年後の住み方まで考えて家を造っていきます。だから"この先10年"ではなく、一生の付き合いですよ。長持ちする家、引き継がれる家を造りたいですね」と眼差しは、あたたかい。
テレビCMに流れるハウスメーカーの<初めに、家ありき>ではなく、住む人間=家族を主人公に据えた、家造りを実践する天野さん。創業140年という信頼は、住む人を大切に思う心ゆえ。
5代目は今、「これからはエコ」と太陽光発電に大注目。と同時に、光熱費の<見える化>も推進中。新築やリフォームの際、分電盤の横にある装置を取り付けるだけで、家中の光熱費すべてが一目でわかるようになる。
「電力使用状況なら部屋ごとにわかりますし、金額換算もしてくれます。実際に光熱費の使用状況を<見る>ことで、省エネにつながります」
先の先まで見据えた天野さんの家造りは、日々進化中なのだ。
"信頼のネットワーク"があればこそ
江戸の職人から、建築の激変期へ
熊川の「天野」という大工集団の始まりは、江戸の終わり頃という。曽祖父は寺院建築も手掛け、祖父は昭和16年、福生2小の校舎建築という大任にあたった。家に昔から伝わる作業着=半纏に染め抜かれた、「大」と「久」を合わせた紋は、祖父の「久幸」という名から取ったものではと天野さん。祖父の代に、大工として隆盛を極めた証なのか。
職人仕事の基本は、「目で盗め」。棟梁の家に大勢の弟子が住み込んで、腕を磨いて独立する。これが、江戸の昔から続いてきたシステムだ。天野さんは住込み職人と暮らした、最後の世代となった。一緒に遊ぶ日常の中、大工仕事を見て育つ。
大学卒業後、家業を継いだ。「職人としてのスタートは遅かったけれど、仕事は見ていた。あとは刃物さえ砥げれば、一人前」と、「目で盗め」の教えのもと、自分で考え、身体で覚えたことが結果として役に立ったという。
一本立ちした天野さんが遭遇したのは、激変の時代だった。昭和から平成へ、建築は大きく変化する。サッシが登場し、外壁は木材からモルタル、そしてサイディング(注2)へ。工期は一気に短縮した。ドアなどの内装材が取付けになり、塗り壁はクロスへ、床は合板のフローリングへ。そして10年前、プレカットが登場した。
(注2)サイディング:工場生産された乾式板状の外装材を貼り付けていくこと
自然の素材で、土地にあった建て方で
それらは、効率優先の建築だった。天野さんは今、自然素材の良さを痛感する。「木や自然素材の塗り壁なら、呼吸をしているので湿気の調整をしてくれる。押し入れは、クロスをやめようと言いますよ。塗り壁にしたら、湿気取りの必要がなくなります。デザイン優先で減ってきていますが、日本の風土にはやっぱり庇(ひさし)が必要です」とこれが、経験で得た答えだった。
「ハウスメーカーでは間口を1m80㎝以上、なかなか開けられないんです。開けると、梁を大きくしないといけないから。ウチならハウスメーカーが絶対できない間取りも、造れますよ」
つまり効率優先の家造りは、人が「家」に合わせるというシステムなのだ。それは違うというのが、天野さんの一貫した考えだ。
家造りで大事なのが、職人のネットワークだという。「建築大工だけじゃ、家は建たない。いい業者=優秀なパートを選んで、取りまとめるのが私の仕事。いわば、協力工事店というオーケストラの指揮者ですよ」と天野さん。「15から16業者が必要で、福生近隣に、2代3代とお願いしている、信頼できる"職人ネットワーク"がある」と、何とも頼もしい限りではないか。
天野さんは一級建築士という国家資格を持ちながら、日々、現場に立つ。「そういう性分だから」と笑うけれど、本来なら事務所で図面を引いていればいい職業なのに、何てありがたいことだろう。
今こそ、お仕着せの「家」ではなく、人を主人公にした「家」を見直すべきなのかもしれない。