珠玉の酒肴と寿司に出会う、愛され続ける名店

スシカズ

鮨和

「カウンターの居心地」に自信があります

住所
福生市福生887-7 富士見ビル 1F
TEL
042-551-6030

一口でいける小ぶりな寿司は、
会話を楽しみながらつまんでほしいという願いから。
小粋な料理の数々に、運が良ければ“未知との遭遇”も。
愛される町の寿司屋が庶民派として再生、
極上の時間がリーズナブルに味わえる。

(店名)

落ち着いた和の外観。のれんをくぐれば、特別な時間が流れる。アメリカ人の客も多い。握りに天ぷらが定番だとか。日本酒で一品料理を幾つか楽しみ、握りで〆たい

  • 端正な檜のカウンター

    タコにはこだわっているという大将が作る「タコのやわらか煮」は、北海道産水ダコを使用。タコの旨味が溶け込んだ煮汁に付けた、半熟卵もたまらない

  • 端正な檜のカウンター

    お土産に最適の太巻き。中身は干瓢、キュウリ、卵焼き、たくわん、エビ、タラコ。断面は美しく、迫力があり、いろいろな味が重なり合い、食感も楽しい

  • 端正な檜のカウンター

    カニも生きたまま仕入、店で蒸しあげる。「生きたまま蒸すと、サクランボのような甘酸っぱさがあるんです」と大将

店長からの一言

店主 小塚和浩さん

小塚和浩さん

<会話の中にあるお寿司>をテーマに、お話しを楽しみながら小粋につまめるよう、ちょっと小ぶりなのがうちのお寿司の特徴です。一貫ずつ価格を明記し、リーズナブルに楽しんでいただけるようになっています。単品料理もいろいろありますし、カウンターデビューはどうか、うちでなさってください。店主を褒めると、いいことがありますから! お気軽に、お立ち寄りいただければと思っております。

基本情報

店名 鮨和
住所 福生市福生887-7 富士見ビル 1F
電話 042-551-6030
営業時間

11:30~14:00

17:00~22:30

定休日 日曜
月曜日、年末年始はお問合せ下さい。
駐車場 コインパーキング(西友福生店の駐車場1時間無料)
カード使用
URL

ストーリー

トロトロの絶品穴子に悶絶

きゅうりと合わせた穴子の白焼き。ふわっと口中でほどける柔らかさ

きゅうりと合わせた穴子の白焼き。ふわっと口中でほどける柔らかさ

 扉を開ければ、和モダンの落ち着いた空間が広がる。何より惹きつけられ、心踊るのが前方に鎮座するカウンター。
「和さん」と常連客から慕われる大将が、威勢のいいあたたかな声で迎えてくれる。その笑顔に、女性一人でも安心してくつろげる店だと確信する。実際、女一人でくつろげるカウンターってなかなかないのは経験済みだ。
 カウンターのショーケースには色とりどりの寿司ネタが並び、目が釘付けに。「タコにはこだわっている」という大将が作る「タコのやわらか煮」は、北海道産水ダコを使用。水ダコならではの厚みのある身が驚くほどやわらかく、甘めの上品な味付けで煮上がっている。プリッとした吸盤の食感も面白い。タコの旨味が溶け込んだ煮汁につけた、半熟卵もやみつきの味だ。「白魚の唐揚げ」は、こんな発想があったのかという驚きとともに、サクサクの食感に箸が止まらない。
 今日の一番のおすすめとして出されたのが、穴子の握りだった。口に含んだ瞬間、思わず目を剥き大将を見た。全身に衝撃が走る。上品な味付け煮の穴子が、あり得ないほどのトロットロの柔らかさなのだ。ふわっと身が溶けてシャリと絡まり口中でほどけて行くが、濃厚な穴子の旨味と甘みがいつまでも残る。間違いなく、生涯最高の穴子だ。大将の小塚さんが言う。
「これは九州産の穴子で、市場で生きたまま買ってきて、うちで〆て煮るんです。仕込んだ日の穴子だけ、このやわらかさなのです。脂が乗っているものはゴボウと炊いて、肴としてお出ししたりもします。運が良ければ、出会えます」
 絶対に、その運がほしい! カニも生きたまま仕入れ、店で蒸し上げる。「生きたまま蒸すと、サクランボのような甘酸っぱさがあるんです」と大将。それはもう、私には未知の領域だ。
 ねっとりとした食感のマグロ、ぶりんぶりんと弾力あるエビの味の濃さ、濃厚な甘みのウニなど感激のネタの数々は、「仲買人との信頼」ゆえのこと。
 カウンターに座れば、魔法のような驚きに出会う。寿司も酒肴も、一つどころか二つも三つもひねりを効かせたものばかり。味の玉手箱、ここにありだ。

安心の価格明記、リーズナブルに楽しめるのも大きな魅力

特上にぎり。個性豊かなネタの旨味をとくと堪能

特上にぎり。個性豊かなネタの旨味をとくと堪能

 22年間、常連に愛されてきた店だったが移転を機に、外人客が多く訪れることもあり、価格明記で、リーズナブルに楽しんでもらえる方向に変えた。ファミリーや女子会にも楽しんでもらえる店にしたいというのが小塚さんの考えだ。
「アメリカ人が多いのですが、彼らは1人前にプラス2、3貫つまんで、天ぷらを食べたいんです。これで、3000円から4000円ですね。このラインをメインに、お子さま連れの方々にも楽しんでもらえるようにしたいですね。女性同士の集まりにも使っていただきたく、<すき焼きプラン>も考えています。寿司屋自慢の割り下で作る、すき焼きです」
 確かに、「おすすめ握り」は竹が1,300円、松が1,700円、特上が2,500円と驚くべき安さ。「大将のお任せ」であっても3,500円なのだから、破格と言っていい。これなら家族の記念日や特別な日に、寿司屋でお寿司という選択肢もあり得るではないか。
「“会話の中のお寿司”というイメージがあって、うちのお寿司は小ぶりなんです。ご家族やお仲間とお話を楽しみなから、小粋につまめるお寿司です。もちろん、外人さんにはシャリを大きくするなど、お客さまのご要望でいかようにもいたします」
 シャリが小ぶりというのは、いろいろなものをちょっとずつ楽しみたい習性がある女性にはうれしい限りだ。
  お客から見えないところも、もちろん手を抜くことはない。干瓢も店で炊き、卵焼きは入間市の「桂ファーム」からこだわりの卵を仕入れ、店で焼く。
 人気の太巻きは、お土産にはうってつけ。中身は干瓢、キュウリ、卵焼き、たくわん、エビ、タラコ。断面は美しく、迫力があり、いろいろな味が重なり合い、食感も楽しい。
「うちは、昔ながらの太巻きなんです。いくらを入れたりサーモンを使うなど、今風のことはやりません。いくらを入れれば、それだけ水っぽくなりますから」
 どっしりとぶれない幹がちゃんとある。骨太の店主が作る、妥協なき味が庶民の元へ来てくれた。こんな“町のお寿司屋さん”が地元にあるのは、なんと幸せなことだろう。

サイドストーリー

福生という街に育てられ……

「“会話の中のお寿司”というイメージがあって、うちのお寿司は小ぶりなんです。ご家族やお仲間とお話を楽しみながら、小粋につまめるお寿司です」

「“会話の中のお寿司”というイメージがあって、うちのお寿司は小ぶりなんです。ご家族やお仲間とお話を楽しみながら、小粋につまめるお寿司です」

 小塚さんは、あきる野市草花生まれ。22歳の時に、夜だけ近所の寿司屋でアルバイトを始めたのが、この世界に入ったきっかけだ。24歳で腰を痛め、本業である運転手の仕事ができなくなった時、親方に声をかけられた。
「30歳まで、我慢してみないか」
 ここから寿司職人としての道が始まった。洗い物から始まり、マイ包丁を買ったのは3年目。初めて平目を下ろした時の、出刃包丁の感触は今でも忘れられない。巻物、焼き物ができるようになったのは4年目のこと。親方の横で、手元を見て覚えて行った。「仕事中、首から上は触ってはいけない」「出前は絶対に荒い運転はするな」「目利きは全部、自分の器量だぞ」等、職人としての基本を学んだ。
 27歳で結婚、独立したのは32歳。赤線の入り口にある寿司屋の店舗を、居抜きで借りた。
「忘れもしない、平成7年3月4日に、7坪の店で開業しました。開店資金を借りて。神戸の地震、地下鉄サリン事件があった年です。女房と2人で半年間休まず、必死でした。福生ではホステスさんにお世話になりました。半年間毎日、同伴で使ってくれたホステスさんもいました」
 その中に男気のある、食通の客がいた。修行した店は住宅街にあったので、一般家庭への出前が多かった。その人物は、小塚さんにこう言った。
「ここは盛り場だ。もう少し、いいものを出せ。毛蟹は生きたやつを入れろ」
 得難いアドバイスだった。当時、3000円はする「キンキの煮付け」がどんどん出て、くじらのベーコンや芽ネギの握りなど珍しいものが大いに受けた。
「福生だからよかったのだと思います。生きた穴子を入れるようになったのも同じですし、三多摩にはない食材を求めて、川崎北部市場にも週に1回は通って、仲買人に相談しながら、いいもの、珍しいものを入れていきました」
 小塚さんご夫妻の人柄もあってか、店は常連からの信頼が厚い、狭いながらも和気藹々、食通たちが集う空間となった。

「座ってみたい!」と、思えるようなカウンターを

常連さんお気に入りの特等席がカウンター。白魚の唐揚げ、やきとり、はまぐりの茶碗蒸し、仕込んだ時の穴子、長芋のステーキなど魅力的な隠れメニューは悶絶必至

常連さんお気に入りの特等席がカウンター。白魚の唐揚げ、やきとり、はまぐりの茶碗蒸し、仕込んだ時の穴子、長芋のステーキなど魅力的な隠れメニューは悶絶必至

 道路拡張に伴う移転により、新店舗を2018年11月21日に旧店舗の近所にオープンした。自分では何も決めなかったと小塚さん。
「この物件を見つけた時、50人ぐらいの常連さんに見てもらいました。ここに決めて内装をどう変えるかについても、イメージを描いてきてもらいました。とにかく店のイメージを変えちゃだめだ。だから、まずカウンターだと。カウンターの雰囲気は前のままにしようと。それは皆さん、同じでしたね」
 前より広くなったため、カウンターだけでなく、テーブル席で何組もの客がくつろげるようになり、今までより幅広い客が通う店となったが、小塚さんはこう願う。
「テーブル席の人が座ってみたいと思える、そんなカウンターにしたいんです」
 その日、最初に「はい」と出されたのは「塩辛」と「たまご焼き」、そして「ハマグリの茶碗蒸し」。具はハマグリのみというシンプルでありながら、ハマグリの出汁がたっぷり効いた茶碗蒸しは絶品としか言いようがない。続いて悶絶したのは、酒粕に漬けた「穴子の白焼き」だ。生き〆穴子自体の旨さはもちろん、酒粕と穴子を合わせるというこの発想が素晴らしい。嘉泉の燗酒がすいすい進む。
 カツオ、赤貝、タイ、マグロ、ウニなど刺身の盛り合わせの見事さといい、頃合いを見て出してくれる「たらと白子の汁物」のほっこり感もいい。 
 さあ、そろそろ幾つか、握ってもらおうか。こうして、極上の夜が過ぎていくのだ。いつか、生きたまま蒸し上げる毛蟹を食してみたいと夢想しつつ……。

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