「どす」は店主の出身、京都弁から。
看板犬の黒ラブがお出迎え、
美味しいゴハンも待っている、
癒しの空間が、田園通りに。
犬も人も笑顔になれる、貴重な居場所となっている。
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自慢の看板犬・黒いラブラドール ルノ
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自慢の看板犬・黒いラブラドール クルミ
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自慢の看板犬・黒いラブラドール ツキ。大型犬に癒されるという声が多い。
店長からの一言
店長 高橋萌菜さん
犬連れの方も、そうじゃない方も大歓迎です。“わんちゃんライフ”をもっと楽しむために、わんちゃんの友達作りにも使ってほしいと思います。犬には不思議な縁の力があり、ふらりと来られて癒されるという方もいらっしゃいます。多摩川の自然に近い場所にありますので、お散歩がてらにお寄りいただければ幸いです。一汁三菜のおいしいゴハンもご用意してあります。
基本情報
店名 | Caféどす |
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住所 | 福生2165-1 |
電話 | 080-3505-0075 |
営業時間 |
11:00~16:00 |
定休日 |
火曜 不定休あり(ご来店前にお店へご確認ください) |
駐車場 | なし(隣にタイムズ駐車場があります) |
カード使用 | 不可 |
URL | https://r.goope.jp/cafedosu |
ストーリー
年間来店数は400〜500頭、人と犬のふれあいの場
木製のデッキテラスから店内に入れば、看板犬の黒のラブラドール(黒ラブ)の姿が。侵入者にまず吠えるは番犬の矜持、でもすぐに尻尾を振って出迎えてくれた。毎日、日替わりで3頭の黒ラブが「出勤」してくると言う。この日は母親ワンコの琉乃(るの)、6歳。お店のサイトでは「オーナー」と紹介されている。ちなみに子どもの玖琉心(くるみ・2歳)は「店長」で、都希(つき・2歳)は「バイトリーダー」だ。そして、「アルバイト」として、オーナーの高橋萌菜さんが犬の下に紹介されている。小学生の娘がいるというサバサバした女性で、PTA会長をやっているというのも納得の人柄だ。
オープンは2016年3月、犬を飼ってみて改めて「わんちゃんと入れる店が少ない」と感じた高橋さんが、人間と犬が一緒に集える店を自ら開いた。
「便宜上、“ドッグ・カフェ”と称するのは、わんちゃんが入りやすくなるから。わんちゃんと人間それぞれ、分け隔てなく過ごせる場所がいいかなと思い、犬を人間と同じように扱うのではなく、犬は犬として、苦痛を感じないようにいられる場所にしたいですね」
来店した犬は写真を撮り、アルバムに保存。そのアルバムが何冊にも及ぶ。遠くは千葉や都内、神奈川からもやってくるのは、多摩川の自然を求めて犬と遊んだ帰りに立ち寄るケースが多いからだと言う。
「犬が好きでも飼えない方や、大型犬に触れる機会のない方もいらしてくれます。一番人気は甘え上手の都希くんですが、癒されたとみなさん、おっしゃいますね。飼い主さんたちはここで、いろいろ情報交換をしたり、誰にも聞けなかった事が聞けたと喜ばれたり。近所のお年寄りが気晴らしに寄られたり、多方面に渡るニーズがあることを、お店をやりながら気づく日々です」
他の人や犬が不快にならないように一応の決まりはあるが、規則で締め付けることはしない。犬と人間がゆったりと過ごしながら、多様なつながりに出会える場が足元にあるのは、とてもうれしくありがたいことだ。とりわけ、愛犬家の身としては心から思う。
人とワンコのおいしいゴハン、京都の小川珈琲も
カフェを立ち上げるにあたり、高橋さんは「ツールとしての食事が必要」だとまず思った。
「カフェメニューと言うと、パスタやピザ、サンドイッチなどが浮かびますが、私がご飯が大好きだということもあり、一汁三菜のしっかりした食事を提供したいと思いました。食育というか、私自身、食べることが好きなこともあって。基本、私が作って、おいしいと思うものしか出せないのですが……」
<おひるごはん>はおばんざい3品、ごはん、おつゆ付きで1,200円。メニューはハンバーグ、本日のチキン、牛すじカレー、気まぐれの4種。
「一番人気はハンバーグですが、基本、家庭のハンバーグで凝ったことはしません。チキンは唐揚げかトマト煮のどちらか、気まぐれは焼き魚が多いですね。普通の家庭のごはん、お母さん味のメニューです」
人気のハンバーグをいただいた。おばんざいは、ナスの味噌炒めと人参のきんぴら、そしてだし巻き卵。どれも、さすが京都!の味わい。これほど繊細で、醤油の色味が前面に出ないきんぴらは初めてで、真似してみようと速攻で思う。ハンバーグは肉の味が濃厚で、ナツメグの香りがほのかに鼻にぬける上品な味わい。ふわっと箸でほどけるほど柔らかくジューシーで、トマトケチャップ+ソウスターソースという「普通の」ソースなのに後引く旨さで、ごはんにぶっかけたい衝動に駆られたことを告白する。とても細やかに作られた家庭の味、丁寧な手仕事をしっかり感じるあたたかな食だった。
甘みは各種クレープ、そして京都人のこだわり、小川珈琲が飲める店であるのもうれしい。ごはんにミニクレープと珈琲がセットになった、「フルコース」が1,700円。これで、至極満足というわけだ。
わんこメニューは3種、手仕事の細やかさはわんこにだって変わらない。「かぼちゃクッキー」(100円)、「しっとり鶏ハム」(200円)、「お野菜たっぷりケークサレ」(300円)の3種で、わが家の愛犬のために持ち帰ったが、鶏ハムへの食いつきようにはこちらがのけぞるほどだった。
「塩も砂糖も入っていません。素材の味だけですが、わんちゃんたち、喜んで食べてくれますね」
添加物は一切使ってない自然素材だけだから、子犬にも高齢犬にも安心だ。
わんこと人間どちらも、お腹もココロも満たされる貴重なスポットって、きっと他にはなかなかない。
サイドストーリー
すべてを変えた、犬との出会い
店名に「どす」を入れたのは、高橋さん夫婦が京都出身だから。京都らしさをユーモアに変え、店名に掲げた。
夫の仕事の関係で福生に転居して17年、今の住まいはあきる野だが、店を出すに当たっては福生にこだわった。
「福生が好きなんです。川があって、異国情緒もあれば酒蔵もある。いろんな顔があって、賑やかで。基本、川のそばを探しました。自然が好きなので。でもまさか、自分がドッグカフェをやるなんて思いもしませんでした」
一人っ子の娘にきょうだいがいたらと思い、犬を飼おうと思ったのが6年前。たまたま、ラブラドールの女の子がやってきた。ルノとの出会い、これが高橋さんの人生を大きく変えた。
「いかに、パートナーとして大事かって思います。この子と一緒にいたいというのが、店を出した大きな理由かもしれないです」
2年前にルノは子どもを産み、その中の2頭を育てることにした。クルミとツキだ。3頭とも顔形はそっくりだが、それぞれ性格が違う。個性ある3頭の看板犬がいることで、店はより豊かになることを高橋さんは感じている。
私が会ったのはルノだけだが、ごはんが欲しくて、座っている私の腰に手でツンツンするから振り向くと、キチッとお座りしているという「わかりやすいぞ、おまえ!」という姿を思えば、今も顔がほころんでしまう。クルミとツキにも会いたいな。そう思っているのはきっと、私だけではない。高橋さんが言う、「犬が持つ不思議な縁」を思わずにはいられない。それがとてつもなく、あたたかなものであることを。
さまざまな可能性を秘めた場所として
ドッグ・カフェ、わんこOKカフェと称するが、高橋さんにはそもそも、愛犬家だけの場にするつもりはなかった。2階にも部屋があり、レンタルスペースとしての利用も可能だ。
「犬とは関係なく、小さなお子様を持つママたち同士が、気兼ねなく集まるのに最適な空間だと思います。思い思いに利用していただければと思っています」
店をすることで高齢者の姿も見えてきた。一人暮らしの老人が、立ち寄ることもある。
「今の社会って人間関係が希薄で、ここはその真逆の場所でいたいんです。あたたかな、しゃべり場というか。高齢の男性が一人で来られて、ルノやクルミの頭を撫でたりして、うちの子たちもなつきますし、『エサ、あげていい?』ってなって、だんだん、うちの子たちに顔を覚えられるようになって……。年が行ったら、なおさら、犬が必要なんだと思いますね」
たとえ犬と暮らしていても、孤独の中にいる人もいる。そうした人たちがここに来れば、いろいろな話ができる。犬の犬種もさまざま、人間もさまざま、そうした人たちがここに来れば、触れ合うことができるのだ。
お客の犬が亡くなってしまうことも、これからは覚悟しないといけない。
「そのわんちゃんは鶏ハムが大好きで、具合が悪くなっても、『ハム、ください』といらしてきて、最後は汁を口に入れることしかできなくなって、数日後に亡くなられはりました」
飼い主にとって、高橋さんと看板犬のいる場所がどれだけ大切で、支えになっていたことだろう。
人が生きるには家庭という「ファーストプレイス」、学校や職場という「セカンドプレイス」だけではなく、それ以外の「サードプレイス」という居場所こそが重要なのだと言われている。まさに、「Caféどす」こそ、犬の縁が取り持つ、さまざまな人たちのサードプレイスとなっているではないか。
「まだまだ、特に地元では知られていないのが悩みどころです。多摩川沿いの散歩ついでに、ぜひ、うちの子たちに会いにきていただければ!」
あたたかな居場所があるのに、知らないでいるのはもったいない。黒ラブたちが尻尾を振ってくれる喜びに、さあ、今すぐにでも会いに行こう。