お酒が飲めても飲めなくても、
美味しい手作り料理でお腹はパンパン。
福祉業界から転職した、店主二人が願うのは、
料理を通して紡がれる人の縁。
居心地のいい止まり木のような空間だ。
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あたたかみのある雰囲気が外にも伝わってくる外観。女性一人でも気安く入りやすい
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2日かけて作られるという「角煮」(580円)は、店の人気メニュー。国産豚を使用。丁寧に脂抜きがされているのでしつこさはない。肉が箸でほどけるやわらかさ。甘めの味付けでほっこり、こっくり
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リピーター多し、人気メニューの「お好み焼」(レギュラー、880円)。サクサク、ふわふわ、さっぱりとした味わいでペロリと行ける。オリジナルソースはやみつき系、ソース好きをうならせる。居酒屋メニューとは思えない、本格派だ
店長からの一言
為房義隆さん(左)・奥富篤さん(右)さん
一見強面風な「W店主」ですが、二人とも福祉業界からの転職組で、心を込めたお料理でお客様をお待ちしております。「人との“ご縁”を大切に」がモットーに、肩肘はらない居心地のいい空間を目指しています。
基本情報
店名 | ごはんと酒菜 ごえん |
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住所 | 福生市福生1043-1 キョーワパレス福生1F |
電話 | 042-513-3233 |
営業時間 |
16:00~23:00頃 (L.O22:30) |
定休日 |
日曜 第3月曜 |
駐車場 | なし |
カード使用 | 可 |
URL | http://r.gnavi.co.jp/gksgg5h90000/ |
ストーリー
お酒が飲めても、飲めなくても
かわいらしいロゴマークが目印のドアを開けるや、多種多彩なメニューに圧倒される。前菜から焼き物、揚げ物、サラダにごはんもの、餃子におでんまで、ありとあらゆるジャンルの居酒屋メニューがズラリ。心ニクいまでに、酒飲みの“ツボ”を知り尽くしているではないか。
それもそのはず、2015年10月にオープンしたこの店は居酒屋好きの、それも結構いい年の“おっさん”が意気投合してつくった、“好きこそ物の上手なれ”の結晶なのだ。居酒屋好きが高じた二人の、いわば理想郷でもある。
そうであっても、あえて居酒屋に純化しないのが面白い。お酒が飲めない人でも楽しんで欲しいという思いから、「ごはんセット」を設定。定食屋のような使い方もできるのだ。為房さんはこう語る。
「居酒屋なのですが、お酒が飲めない人、これから仕事に行く人たちに、美味しいごはんを食べていただけるようなお店にもしたかったんです。だから店名の前に、<ごはんと酒菜>とつけました」
この「ごはんセット」は汁、小鉢、香の物のセットで400円。多彩な居酒屋メニューから主菜を選べば、バラエティ豊かな夕食の出来上がりだ。栄養価も十分、食事処としての利用価値も非常に高い。何より驚くべきは、その値段。「ねぎ塩豆腐」(450円)、「焼き餃子(5ケ)」(380円)、「かつとじ」(580円)、「豚のしょうが焼き」(530円)、「鶏のからあげ(大)」が880円と、すべてがとてもリーズナブル。メニューに「大」と「小」が設定されているのも、おひとりさまにはうれしい限り。一人飲みだって、いろいろなものをつまみたいから。
お客がシアワセになる仕掛けが随所にあって、店主の人柄がにじみ出る肩のこらない雰囲気と相まって、リピーターが多いというのも納得だ。
ただの居酒屋メニューと思ったら……
“ポテサラに工夫を凝らしている店は、いい居酒屋”という勝手なジンクスを持っているが、まさに的中だった。ごえんのポテサラ(大580円)は、じゃがいもの形を少し残してつぶしたものにキュウリとハム、玉ねぎが入ったシンプルなポテサラの上に、刻んだたくわんがアクセントのタルタルソースがかけられて供される。タルタルソースのほんのりとした甘酸っぱさと清浄感あふれるポテサラの協奏という、二層のハーモニーに箸が止まらない。こんなポテサラ、初めてだ。
人気メニューの「角煮」(580円)は国産豚を丁寧に脂抜きし、2日間かけて煮込んだ一品。豚バラの塊が、箸でサクッと切れるという驚きのやわらかさ。ほろほろで、ぷるぷる。甘めの醤油味がこっくりと懐かしく、ホッとできる味で、脂っこさやしつこさは皆無、女性でもペロリと行ける。「ごはんセット」で頼んだ客が煮汁をごはんにぶっかけると聞き、至極当然だと心から思う。
「粉もんが好きだから、鉄板を入れたかった」という奥富さん。自慢の「お好み焼」(レギュラー 880円)も、人気メニューだ。「え? うそ」と思うほどの厚みと大きさ、かなりのボリュームだ。ふわふわ、さくさく、さっぱりとした旨さにどんどん箸が進む。きりりとしたオリジナルソースも抜群で、「そういえば居酒屋で、ちゃんとしたお好み焼きって食べたことがない」ことに思い至る。その意味でも貴重な店だ。おひとりさまを思ってのことか、レギュラーとハーフが用意されているのも泣かせる心配り。
「明太バター焼うどん」はやみつき必至、女性のリピーター続出の〆。夏でも欠かさないおでんは、もはや店の鉄板メニュー。「冷やしトマト」は湯むきした丸ごとのトマトをきりっとした甘酢醤油でいただくという、意外な一品。
フライにはたっぷりの生野菜が添えられて、店主の客への愛をびんびんに感じる。「料理人の修行をしたわけではないですが、とにかく居酒屋が好きで、居酒屋をするのが夢だった」という、為房さんと奥富さん。心を込めた手作り料理で、理想の居酒屋へと今日も進化を続けている。
福祉業界から居酒屋へ、運命の出会いがもたらした奇跡
出会いは新宿3丁目、居酒屋のカウンター
為房さんは岡山出身、大学入学と同時に上京、就職先を青梅市にある児童養護施設を選んだ。家庭に恵まれない子どもたちとの関わりの中で、食事作りに興味が湧いてきた。為房さんは言う。「グループホームという家庭のような環境だったせいか、職員が家庭と同じように子どもたちにご飯を作るんです。父が板前だったのもあるのですが、料理って面白いなって思いました」激務の養護施設職員の唯一の息抜きは、居酒屋で過ごす時間。お気に入りでよく行く店が、新宿3丁目にあった。奥富さんは埼玉出身、工業系の大学を出た後、ゼネコンで12年働いたが、過酷な仕事に限界を感じ、父親の病気をきっかけに介護職に出会い、高齢者介護の世界へ転身。「認知症の方のグループホームで、料理と出会ったんです。オフの楽しみは、居酒屋探訪でした。もともと、居酒屋をやりたいという夢があったんです」奥富さんのお気に入りは新宿3丁目の居心地のいいカウンター。ある日、隣同士になったのが、為房さんだった。何度か顔を合わせるようになり、意気投合。しかしまさか、お互いがパートナーとなり店を作ってしまうとは思いもしない。
居酒屋をやろう!
カウンターでいつしか二人は、夢を語るようになった。居酒屋をやりたい、一緒にできたらいいねと。お互い、自分の仕事に限界を感じていた時期でもあった。「やろう!」と決めたのは、為房さんが47歳、奥富さんが40歳の時。為房さんが言う。「本当に、運命的な出会いだったと思います。偶然、出会った2人が夢を共有し、夢を実現しようと動き出したのですから」仕事の合間に物件探しをし始めたのが、2013年。翌年には為房さんが先に仕事を辞め、定食屋で働き、料理の腕を磨くだけでなく仕入業者との関係も築く。店は住んでいる羽村か、隣の福生でと決めていた。為房さんはいう。「今のこの店の物件を見た時、直感的にここだ! ここしかない!と思いました。この出会いも運命でした。そういう“ご縁”でつながってできた店なので、名前は“ごえん”しかありませんでした」居抜きだったが、いろいろと手を入れた。奥富さんは語る。「明るくて外から店内が見えやすくして、女性が入りやすい店にしたかった。お客さまと話ができる、カウンターは必須ですね。トイレにもこだわりたかったし、店内は和を基調に落ち着いた雰囲気でまとめました。季節ごとのディスプレイをいろいろ工夫して、女性のお客さんに喜んでいただきたいと」そのおかげか、女性客が結構多い。宴会料理も3500円、4000円、4500円と非常にリーズナブル。平日限定ハッピーアワーはお酒が半額に。料理だけでなくお酒も焼酎、日本酒、ワインとあらゆるタイプの酒飲みに対応している。2016年10月、船出して1年。二人がこの店にかける思いは、ただ一つ。「すべてが出会い、人と人とのつながりでここまできました。一人一人は点ですが、それがつながって面となって広がっていく、そんな拠点になるようなお店になれれば。“ごえん”という名前を肝に据えて、福生という街の止まり木、居場所、拠り所になれればと思っています」おっさん二人という一見、こわもて店主だけれど、話してみればすぐわかる。飾らない優しさと、さりげない包容力がどんなに心をほぐしてくれるかを。お茶目でチャーミングな2人の笑顔に、今宵も癒されに出かけたい。