舌にからみつくような驚きのやわらかさ、脂の甘み。ステーキでまさか、香気に酔いしれようとは・・。国境、時代を超えて熱く固く支持される、老舗ステーキハウスが、第5ゲート前に健在だ。
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上質な肉の脂肪に酔う、神戸霜降りサーロインステーキスペシャル(10500円)。 ステーキにはすべてスープ、サラダ、パンまたはライスがつく。野菜の甘味を感じる、自家製ドレッシングにもファンが多い
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一番人気、サラミ、マッシュルームのミックスピザ。吟味されたブレンドチーズは、胃もたれしないと評判。創業時から変わらぬ人気を誇る
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一瞬にして、70年代へタイムスリップ。店内はとても心地よく、落ち着ける
店長からの一言
若菜貞雄さん, 若菜 智さん
いつお見えになられても、安心して食べられる最高の味を誇りに日々、努めております。開店当時からご来店されているお客さまも多く、現在では4代続いていらっしゃるご家族もあります。昭和54年と58年には、東京都知事賞も受賞しております。正真正銘、福生きっての老舗のステーキハウスです。どうか、おいしいステーキを食べにいらしてください。
基本情報
店名 | 神戸ステーキハウス |
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住所 | 福生市熊川1115 |
電話 | 042-552-2941 |
営業時間 |
12:00~14:30 (LO~14:00)17:30~22:30 (L.O~22:00) |
定休日 | 木曜 |
駐車場 | 7 台 |
カード使用 | 可 |
URL | http://kobesteakhouse.jp/ |
ストーリー
最高級シャトーブリアンステーキとは・・
70年代初期のインテリアで統一された店内はセピア色に包まれ、空気までもが懐かしい。「タイムマシーン(=クルマ)に乗ってあの時代へ」の雑誌企画で、70年代を代表する店に選ばれた。50年代は山の上ホテル、60年代はキャンティだから、そのスゴさがわかるだろう。
開店当初から変わらぬ不動のメニューでイチオシが、シャトーブリアンステーキ。これはフランスの貴族が所望した、ヒレの中心の上質な部分を分厚く切ったステーキのこと。76歳で今も厨房に立つ店主・若菜貞雄さんによれば、「厳選した和牛の上質なヒレ肉の中心部分で、1本のヒレで3人前しか取れない」という希少部位。「一番やわらかくて、美味しいから」と若菜さん。これを分厚く切って、炭火で焼く。「肉は炭火でないと・・。炭が旨味を閉じ込めるんだよ」と。特別限定で「お二人様用厳選最高級神戸シャトーブリアンステーキ」(45,150円)なんて一体どんなお肉なのか、想像すらできない。
これぞ、天上のステーキ! 夢心地が止まらない。
目の前に供されたのは、美しい網目模様がついた迫力の一品。「神戸シャトーブリアンステーキスペシャル」(スープ、サラダ、ライス又はパンで11,340円)だ。驚きの厚さ、少なくとも○センチはある? ナイフがすーっと吸い込まれるように入っていく。一口で、別次元へ連れ出されたような衝撃。これは何? これが肉? 眼をみはるほどのやわらかさ、レア部分が舌にまとわり絡みつき、そしてふんわり溶けていく。やがて香気が、ふわっと口中に満ちてくる。あっさりした醤油ベースのタレが抜群にいい。若菜さん曰く、「ヒレ部分に、サシがある」。だから、えもいわれぬ旨味が後々まで残るのか。
「神戸霜降りサーロインステーキスペシャル」(スープ、サラダ、ライス又はパン、10,500円)も、これまでの乏しいステーキ体験を根底から覆した逸品だ。やわらかさはナイフを入れた瞬間に確信となり、ただそのままで、口の中で肉が溶けていく。抜群の風味を口中に残し・・・。ああ~、脂が甘い。それも衝撃が身体を貫くほどに・・・。
開店当時から代々通い続け、今や4代目という家族がいる、横田基地の外人さんが「祖父、父から日本に行ったら寄りなさいといわれ・・・」と来店するケースも多い。すべて、納得の伝説だ。NBAロサンゼルス・レイカーズ所属、現役屈指の実力と人気を誇るアメリカのスーパースター、プロバスケット選手、コービー・ブライアントの名が、この「神戸ステーキハウス」に由来するということも。ここでステーキの旨さに感動した父が、息子に「kobe」とその名を託したのだ。それほどまで、パワーをもつステーキなのだ。
基地と人々と、そして神戸ステーキハウスと
美味しいステーキには訳がある
創業は1972年。立川エアベースのコーヒーショップ、外人専門バーを経て、福生で10年、繁盛店のバーを経営していた若菜貞雄さんが、基地の前に開いたレストラン。「基地の将校クラブでシャトーブリアンステーキを食べたけど、デラックスだけど、肉が旨くないんだよ。よし、和牛のいいものを使ってやろうと」――、これが始まりだった。
ファミレスが流行りはじめた時代、「反対されたけど、安っぽいレストランにはしたくなかった。和牛のいいものを中心に使用して、3000円から10000円位までと2本立てでやろう」とスタート。店名の「神戸」は、神戸牛に特化するのではなく、「外人にとって"KOBE BEEF"は、和牛のおいしい肉というイメージ。ブランド牛でなくても、和牛のA5、A4のいいものを選べば十分うまい」という方針も、当初から変わらない。ホールを担当する息子の智さんは、「親父の目利きは業者もかなわない。いい肉を選び出す技術は、ずば抜けている」という。「肉は非常に奥深い」と、笑いながら。
目利きと同時に大事なのが、熟成という。厳選した上質の肉を長年培った経験で熟成させ、一番いい状態で提供する。つまり他では味わえない神戸ステーキハウス独特の、とろけるようにやわらかく風味と香りある肉は、熟成のなせる技だったのだ。
ピザをつまんで、ワインを飲んで・・
なじみの客はピザをつまみながら、ステーキが焼けるのを待つという。これが、昔からのスタイルなのだ。ピザも開店当初からのメニュー。自家製の生地を手で延ばし、世界中のチーズを味わった若菜さんが、独自にブレンドしたチーズが自慢。生地はもっちり歯応えがあり、チーズが抜群に美味しくて、後引く旨さだ。ビールかワインで一杯やりつつ、待つ時間の至福さよ!
「この値段でこの肉は、都心では食べられない」と都心から定期的に通う客も、ファンとなっている著名人も多い。今や、インターネットで全国からお客が来るようにもなった。 古き良き福生を今に伝える、老舗ステーキハウス。若菜さん自身の基地との関わりはもちろん、フェンスの向こうのアメリカとこちら側の日本人と、基地があってこそ生まれた、福生ならではの名店なのだ。ランチなら1890円~で、伝統のスタイルが楽しめる。いつかディナーを・・と野望を胸に、70年代の空間に漂うのもなかなかステキだ。