牛浜駅前に燦然と輝く、
「大衆酒場」ののれん。
無くてはならぬ、「焼きとり」の秀逸さはもちろん、
熊本直送馬刺しをはじめ、
小粋な酒肴に心が躍る。
まさに、「あってよかった! 駅前酒場」。
絶品の生ビールでクイっと一杯、
さあ、至福の始まりだ。
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焼きとりだけでない、店の看板メニューの「串揚げ」。「大海老」430円、「鶏カツ」130円、「シイタケ」180円、「紅ショウガ」150円。サクサクの軽い衣で、いくらでも食べられる
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これぞ、大衆酒場といった店内。壁には「キンミヤ焼酎」のポスターも。椅子に座ったら、まずホワイトボードの日替わりメニューを確認するのがオススメだ
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女性にうれしいサラダも充実、フルサイズとハーフサイズが用意されているという心配り。「蒸し鶏とトマトのサラダ」は、濃厚で深みのある特製ニンジンドレッシングが秀逸
店長からの一言
店主 市川聖さん
地元に根ざしたお店として開業以来10年、常連のお客さまには「やっぱりいい店で、変わらないね」、新規のお客さまには「この店、いいね」と思ってもらえるよう、日々、頑張っております。大衆酒場ですが、お客さまのいろいろな要望に応えられる店となっております。ぜひ一度、お気軽にお立ち寄りください。
基本情報
店名 | 炭火やきとり 赤星 |
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住所 | 福生市牛浜125 |
電話 | 042-530-3222 |
営業時間 |
17:00~24:00 |
定休日 | 水曜 |
駐車場 | 近くにコインパーキングあり |
カード使用 | 可 |
URL |
ストーリー
焼きとりに生ビール、大衆酒場の勘所こそ完璧に
長年「火の鳥」として親しまれてきたが、2022年7月に「赤星」として新たな一歩を踏み出した。市川さんのこだわりはあくまで「大衆酒場」、だからこそ、サッポロラガービールの「赤星」を店名に冠した。「赤星を置いてある店は、間違いない」という、酒飲みの定説に賭けたのだ。
大衆酒場の「顔」はもちろん、焼きとり。だからこそ、市川さんには譲れない信条がある。
「安く食べてもらいたいので銘柄鶏は使わず、国産の鶏を使い、食べ応えのあるよう大きめにカットし、焼いている段階で、美味しくなるような工夫を忍ばせています。特にレバーは、8時には無くなるほどの人気です。ささみは火の通し加減の絶妙さに加え、添えるのは本わさび。タンは3種類あって、硬くてとても食べられない“タンサキ”は、とろとろに煮込んでから串に刺して焼いています」
その「タンサキ」に、衝撃が走った。外はカリッとした食感で炭火の香ばしさをまとい、肉を噛めば驚くほどトロトロのやわらかさ。こんな食感の串焼きは初めてだ。しかも、タンは通常の「タンモト」と、1日2〜3本という希少部位の「タンシタ」があり、3種の異なったタンの串が楽しめるのだ。
人気の「レバー」は臭みなど微塵もなく、ふわっと口中で溶けて行く。甘めの力強いタレがいい伴走者だ。ヒマラヤ岩塩で食す「つくね」は、驚きの弾力でしっかりと肉を喰らう喜びが味わえる。
焼きとり1本1本に、それぞれの個性に応じた「企業秘密」の隠し技が仕込まれているという、手間を惜しまない作業に客への愛をこれでもかと感じる。
そして大事なお供の生ビールだが、敢えて、サッポロの「パーフェクト黒ラベル」を採用。青梅線沿線で、この生ビールを飲める店はほんの数店とか。泡はクリーミーで雑味なく、優しい味わいの生ビールがじんわりと沁みる。角が取れた、まろやかな味わいに他とは違うとすぐにわかる。さすが、「青梅線で一番旨い生」と自負するだけのことはある。
“安くて美味い”のその先へ、絶品の極上馬刺し
コロナにより、かなり考えが変わったと市川さんは言う。
「皆さん、家で安価に食べ物とお酒が楽しめることを知りました。だから、家でできることをしてもしょうがない。大衆酒場は安くて美味いが当たり前で、1000円で食べて飲める利点もありますが、『いいものを食べたい!』というニーズにも応えて行こう、うちでしか食べられないものを出そうと考えました」
そこで白羽の矢を立てたのが、馬刺しだった。産地、業者を厳選した結果、熊本からの直送を採用。冷凍は1回のみの馬刺しのブロックを、客から注文を受けてから解凍し提供する。この解凍の仕方で、供される状態のモノが違うと言う。そのブロックを、グラム単位で値段を決めて提供する。どこまで、客に優しいのだろうか。
しかも、部位は何と8種もある。「ヒレ(上赤身)」、「モモ(赤身)」、「ハラミ」「クラシタ(ロース)」「ヒモ(中落ちカルビ)」「タテガミ(白身)」「中トロ」「レバ刺し」と、これほどの部位の馬刺しが一堂に会する店は、本場・熊本でしかあり得ないのではないか。特に「レバ刺し」は2人前のみ3,200円と値は張るが、目を瞠るほどの美味で、入荷待ちの客多数という人気だ。
今回は、中落ちカルビの「ヒモ」をいただいた。美しい赤身に霜降りの脂がくっきりと映える。臭みなど皆無、ねっとりとした力強い食感の馬刺しは、一口でその鮮度の確かさを思う。脂が甘く、口中でとろっと溶ける。なんと清らかな味わいの馬刺しだろう。
「お客さまには好きな部位を選んで、さまざまな味わいを楽しんでいただけます。よそと味が違うという声をよく聞きます。一番人気は上赤身のヒレですが、牛で言えばシャトーブリアンのような希少部位となっています」
これほど美味しい馬刺しは、熊本で食べて以来かもしれない。地元にいて、本場と何一つ変わらない味で食せるなんて、こんな幸せはあるだろうか。これはもう、今すぐ、牛浜駅を目指すしかない。
地元に根ざし、地元の人々に愛される店を目指して
毎日違う“おすすめ”を、8年作り続け
「赤星」の前身はご存じ、Fの店古参「火の鳥牛浜編」だ。「火の鳥」としては、河辺店に続き2店舗目の店だった。市川さんは24歳で入社、河辺店で社長の菊池康弘さんの下で働いていたが、25歳で牛浜店の店長に抜擢され、以来ずっと、牛浜でカウンターに立っている。映画の専門学校を出て撮影所や舞台で働いていた市川さんだったが、菊池さん自身が長年身を置いた映画の世界からの転身だったこともあり、料理の世界で生きることを決めた。
「『映画もいいけど、自分の店を持つ方が面白いよ』と言われたことが大きかったですね。社内では、牛浜は2店舗目だから大切にしようと言っていて、毎日、始発帰りでした。終わってからも、片付けをしたり、仕込んだり、話し合ったり……」
菊池さんから完全に独立したのは2018年、市川さんは29歳の時に、念願の自分の店を持った。
「『一から新しい店を始めるより、付いているお客さんもいるから』と菊池さんに勧められ、経営権を買い取りました。売上から何%か払うことで返済して行き、2年半で返しました。早く、自分の店にしたかった。ちょうど結婚して、子どもができたばっかりで大変でしたが……」
しばらく看板は「火の鳥」のままだったが、「自分の店だから、名前を変えてやった方が」という菊池さんのアドバイスもあり、「赤星」という屋号を掲げた。「本店」を名乗るのは2022年4月、昭島に2号店を出したからだ。
もともと料理が好きだった市川さんだが、「“料理偏差値”が上がったのは、菊池さんから、1日2品、毎日新しい料理を作ること」という指令からだ。8年間、休み以外は毎日、違ったメニューを考え、客に提供してきた。
「お店に来たらまず日替わりのメニューを見て、そこから頼むのがお勧めです。うちはお通しを出しませんので、最初から好きなものを頼んでいただければ」
2022年10月4日の日替わりメニューは「塩煮込み」「アサリの卵とじ」「シイタケの醤油チーズ焼き」(全て600円)、「キュウリと茗荷の浅漬け」(430円)、「白桃アイス」(400円)。どれもお手軽かつ、魅力的な一品だ。
見えないところも誠実に、お客ファーストを貫く
女性に人気の、意外な新メニューがある。それが、ラーメンだ。
「丸鶏を使って、化学調味料を一切使わず、野菜の旨味だけで作ったスープが自慢です。女性でも食べられるラーメンを目指しました。妻が妊娠中に食べられるものをと考えたスープがベースです。女性の方もスープを最後まで飲み干しますね。おかわりする方もいらっしゃるほどです」
化学調味料などケミカルな食材を極力抑えるのも、店の方針だ。例えばサワー類のベースには、キンミヤ焼酎を使っている。
「キンミヤは高いのですが、身体に悪いものを使いたくなくて、醸造アルコールなど業務用のお酒は入れていません。うまみ調味料もそうですが、お客さまを騙すような仕事はしたくないと思っています」
なんとありがたい店の姿勢だろう。うまみ調味料という名の「アミノ酸」が蔓延する食品業界の現状下、外食につきまとう不安をきちんと一掃してくれる。
大衆酒場のもう一つの“顔”、「煮込み」にも丁寧な仕事がなされている。
「モツの下処理ですが、敢えてモツの臭みを少しだけ残すよう、臭みの抜き方を以前と変えています。具はシンプルに、大根とこんにゃくだけ」
モツがとろとろに煮込まれ、赤味噌ベースの濃厚かつあっさりとした味噌味に絡み合う。いくらでも食べられそうな安定の味わいだ。「ガツ刺し」も、丁寧な下処理のおかげで臭みは全くなく、ガツならではの独特な食感が楽しめる。
休みの日も店で仕事をし、いい店にしようと日々努め続ける市川さん。それもこれも、地元の人に好かれる店でありたいという思いからだ。
「この場所に10年いますから、当時の若者が結婚して子どもができたり、成長を見守れる喜びがありますね。『市川さんがいる、変わってないな』という声はうれしいです。でも、大声でこう言いますよ。料理は、超パワーアップしてますよと」
牛浜駅前の大衆酒場には、地元を見つめるあたたかな眼差しがあった。貪欲に美味しいものをいつも探している執念も、全てが地元愛に貫かれている。