お店訪問
創業100余年、確かな技術と確かな眼

今こそ、イージーオーダーの時代
90年代に入り、ナカノ洋服点は3度目の転機を迎える。大型量販店の出現という時代にあって、弘一さんは本物の良さを多くの人に伝えたいと願い、イージーオーダーに命運を賭ける。「見本で生地を決め、デザインブックで襟や胸ポケットなどディティールのデザインを決めていきます。組み合わせによりさまざまなバリエーションが可能ですから、自分の好みに応じてどうにでもできます」とのこと。デザインを決めたら採寸をし、縫製工場へ発注、約2週間で完成となる。仮縫いの作業がないのが、その特徴だ。「今、採寸ができない店が結構多いんですよ。これは長年の経験がないと・・」と弘一さん。縫製工場の選択もそうなのだが、職人の技術という裏づけがあればこその、新システム採用だった。
イージーオーダーの魅力は、何といってもその価格。何と3万円台からできるという。生地やデザインの選択肢の幅が広いことも、納得のいく自分だけのスーツを手にできる大きな要因。そろそろ人間が洋服に合わせて生きる時代とは、サヨナラしてもいいのでは?











福生西口商店街でも最古参の洋服店、創業100余年を堂々と謳う。現社長・中野弘一さんの祖父、創業者の中野常吉さんは明治27年生まれ。12、13歳で五日市にあった洋服店に住み込みで丁稚奉公の修行を重ね、弱冠20歳の若さで現在地に洋服店を構えた。
以降、その腕の確かさで西多摩一円からお客がやってきたという。「この前も67歳の方から“成人式の時に作ってもらった、おじいちゃんの服は今でもしっかりしているよ”と言われました」と弘一さん。この腕利きの洋服職人が作り上げた確固たる伝統こそ、商売の形態は変わっても、不動の基盤として店に生き続けている。
2代目以降、既製品を提供する形態に商売は変わったが、店に並ぶ商品は、確かな審美眼で選ばれた上質のものばかり。「一点、一点、自分の目で確かめて仕入れています。しっかりしたもの、確かなものしか置きません。これは創業以来、譲れない信念です」と弘一さん。初代以来培われている職人気質の<精神>が、店の随所に光っていた。