福生七夕の歴史とともに
うどんや蕎麦がご馳走だった時代に

甲府のご当地グルメ「とりもつ煮」は、昔から藤屋の酒肴の定番。甘辛く煮付けたとりもつがお酒にぴったり。地元の銘酒「嘉泉」&「多満自慢」が楽しめる
酒肴を充実、「蕎麦屋で一杯」の粋な楽しみ方も
2年前に嘉一さんと香織さんの代に変わった時、二人は酒肴の充実を考えた。お墓参りやゴルフなど都心からの客が、板わさや出し巻き卵などで酒を呑み、最後に蕎麦でしめるという粋な楽しみ方を目の前にして、地元のお客にもこのようにくつろいでもらえればと考えたからだった。「おばあさんが一人で、粋にお酒を飲んでいたり、昼酒ができるのも蕎麦屋ならでは。蕎麦屋の楽しみ方を知ってもらえれば・・・」と嘉一さん。
藤屋自慢の酒肴に「鶏もつ煮」がある。昨年のB級グルメ祭典でグランプリに輝いた、甲府のご当地グルメ。働いていた板前さんが甲府出身だったため、もともと藤屋にあったメニューだった。甘辛く煮つけられた鶏のレバーと砂肝は酒の肴として、後引く旨さ。山芋磯辺揚げ、牛すじ、もつ煮も人気メニューだ。「これからもっと、もっと工夫をしていきたい」と語る香織さんには、「駅前食堂」というイメージをいい意味で破りたいという思いがある。
粋な蕎麦屋の楽しみも叶えられ、一方、「女性のお一人さまもお年寄りも、だれもがゆったり楽しんでほしい」と気づかってくれる店は、多分、都心の専門店にはあまりない。時代が変わっても福生の"みんなの食事処"は、庶民の笑顔ほころぶあたたかい場所に変わりはないのだ。










時は、昭和26年。商店街の振興をはかるため、福生で七夕祭りが初めて開催されたその年、藤屋も現在地に店を構えた。そもそも、店の始まりはうどんの配給だったという。
「当時は牛浜に家と工場があり、うどんを打って、工場で茹でて、リヤカーでここまで運んできたと、おばあさんが言ってました」と香織さん。嘉一さんは創業者から数えて、4代目に当たる。
「この辺りに他に店がなかったせいか、ものすごくお客さんが入りました」と香織さん。うどんからラーメン、中華、蕎麦に丼物とレパートリーが増えて行ったのは、お客の要望に誠実に答えていった結果だという。それは、時代の要請だったのだ。デパートの食堂に和洋中と何でもあった時代、庶民にささやかなハレの食を提供する「駅前食堂」には、どんな気分にも応えられる豊富なメニューが大事だった。そんな昭和の空気の中、育っていった駅前食堂は、福生の町に無くてはならない、みんなに愛されるあたたかな憩いの場となったのだ。